



大原はだか祭り
御宿に住んでいる同期のSさんから9月23日に催される「大原はだか祭り」を見に行かないかと誘われた。祭りの名前は聞いたことがないが、彼からLINEで過去の祭りの動画が送られてきてなかなか面白そうな祭りと思われたので行ってみることとした。また彼も知っている伊那谷に住む先輩のNさんにもお声がけをしたら「行く」との返事。それで二人で東京駅に待ち合わせ外房線特急「わかしお号」で行くこととした。
千葉県は8月13日の線状降水帯により想像を超える豪雨で街が広範囲に冠水、水没した車の中で命を落とす人という大災害があった。なにしろ24時間で8月1ヶ月の平年降水量の3倍を超えたという。そして再び祭りが近づく9月21日に台風25号の影響でまたまた千葉で大雨、市原市で土砂崩れ、印旛沼では堤防決壊で周りは浸水という被害に見舞われた。翌22日にSさんから外房線は不通で特急わかしお号も当面運休との連絡がきた。ただ高速バスで大多喜まで行けるので、そこで車で迎えに行くという。それならバスで行ってみるかとNさんにも伝え、とりあえず行くつもりで準備した。
さて当日23日の朝3時に目を覚ましたので、枕元のスマホでChatGPTで大原に行く交通手段を尋ねてみた。すると外房線は不通だけど高速バスで大多喜、勝浦まで行けると、また時刻表まで示されていた。ただ道路事情により確定的ではないとのコメントも添えられていた。この回答を寝床でSさん、それに東京駅で待ち合わせすることになっているNさんに伝えた。Sさんからは高速バスで大喜多まで来てくれ、翌日の帰りは蘇我まで車で送ってくれるとの返事が来た。Nさんからはしばらくして今回はやはり見合わせる、ドタキャンで申し訳ないとの返事。私はもう何がなんでも行く気になっていたので、とにかく東京駅まで出かけることにして寝床から起きあがって出かける準備をした。
八重洲高速バスターミナル
朝家を出たら雨が降っていて、いつものルートで新宿に出て中央線に乗って東京駅に着いた。八重洲バスターミナルは昔筑波に行くときによく利用したので切符購入やバス乗り場は分かっているが、大多喜行きは八重洲高速バスターミナル地下Bから出発とある。八重洲南口前の地上乗り場に加えて最近地下のターミナルができたようだ。初めてなのでスマホ地図の片手に進。東京駅八重洲南口を出てすぐ階段で地下におりそのまま進むとAターミナルは左、Bターミナルは右との表示があり切符売り場が地上1階にあった。座席指定があるかもしれないと思い係員がいる売り場で切符を購入しようとすると現金でなければ自動販売機で買えと言われた。チケットは単に料金が記載されているだけで、どうも先着順らしい。外房線が不通なので混んでいるかもしれないと思い、急いで地下2階のバス乗り場に向かう。大多喜行のバス乗り場には10名程の列が出来ていた。バスは大多喜から先のJR勝浦駅経由最終地点のJR安房小湊駅まで行けるようだ。9:50発なのでまだ30分以上も待たねばならぬ。だけど、これで一応大原に行けることで安心した。
10分前にようやくバスに乗り込む。結局バスは満席で補助椅子の人がひとりという状態であった。バスが地下ターミナルから地上に出ると外は小雨模様であった。バスは八重洲、京橋と東京のオフィスビル街を通り抜けていくが久しぶりに来たせいか新しいビルが林立している。東京駅周辺にこのような高層ビルばかりあって果たしてオフィスやお店で埋まるのか、はたまた東京駅周辺にこんなにビルが集中することで、電力供給などのインフラ、人が集中することにより電車などの交通機関は大丈夫なのかしらといらぬ心配をする。しばらくして社内アナウンスから湾岸道路が事故渋滞であるためアクアラインを通って千葉に向かうとのこと。アクアラインで外を眺めたら雲が低く垂れこめ灰色の海面が見えるだけ、この天気で果たして祭りは行われるのであろうか、ちょっと気になる。
大原
バスはやがて木更津金田BT、市原鶴舞BTを経て大多喜のバス停に着く。最初千葉県の大多喜という町がどのあたりか皆目分からなかったが、千葉県の真ん中からちょっと大原寄りといったところか、山間の中にあるがけっこう大きな町である。大きなスーパー「オリブ」の前がバス停なので雨にぬれずすぐスーパーに入れた。Sさんが待ってくれているものと思ったが姿が見えない。しばらくしてスマホのLINEに百円ショップで待っているとのことでそこで落ち合う。さっそく駐車場に留めてある彼の車に乗り込んで大原に向かう。途中お昼時なのでチェーン店の「松屋」で牛丼を食べた。外は小雨。汐ふみ
神輿が海に入る「汐ふみ」は2時半からなのでまだ1時間程ある。漁港の前で行われるのかと思いきやここから約1㎞ほど離れた大原海水浴場で行われるとのこと。漁港は単にお神輿の集合場所なので、先回りしてぶらぶら歩きながら海水浴場に向かう。
さて大原海水浴場に着くとたくさんの見物客であふれていた。ただ神輿が海に入る砂浜に近づこうとするも浜から100m以上離れた個所にロープが張られ、見物人はそれ以上前に進むことが出来ない。ロープの最前線に立つも神輿が海に入る様子をまったく確認することができない。
観客エリアから砂浜へと続く道ではそれぞれの神輿が次々と砂浜に進んでいく。砂浜で神輿が海に入っているのか遠くの方で歓声が上がる。またかろうじて神輿が揺れているのが遠目で確認できる。ただ観光する立場から考えるにもう少し観客エリアに工夫があってもよいと思った。
ひととおり海水浴した神輿がそれぞれ観客エリアに戻ってくる。そこではお神輿を持ち上げるパーフォーマンスをしてくれるお神輿もあった。ここまで漁港からお神輿担いで大原海水浴場に来て、海の中でお神輿を担ぎあげ、さらに砂浜をまた戻ってくるには担ぎ手にとってえらい重労働であろう。戻ってきたお神輿の中で観客の前でお神輿を掘り上げて見せてくれる熱意に感動する。あたりに賑やかなお囃子が鳴り響き、やはり日本の祭りはいいもんだなと思った。






大別れ
さて次のイベントは大橋小学校の校庭で行われる「大別れ」という行事。なにしろ全部のお神輿が小学校校庭に集合し走り回るというものである。始まりが6時からということでずいぶん時間がある。
大原海水浴場からぶらぶら歩いて大原駅に向かう。途中ところどころでお神輿がおろされ担い手が休憩している。海水浴場から大原小学校まで相当距離があるので致し方ない。ご苦労様と声をかけたくなる。
やがて大原駅前の中央商店街に来ると通りの両側には延々と屋台が立ち並ぶ。おそらく関東一円の屋台がここに集合したのではないかと思われる。ただ焼きそばが600円、ちょっとしたお好み焼きが700円と昨今の値上がりが反映されたお値段になっている。また焼きそば屋台もいくつもあるがどこも同一料金、これではお祭りに来た子供たちも気軽に食べることはできないのではと思われた。我々もお昼の牛丼が850円だったことを考えるにちょっとした腹ごしらえするには少々躊躇する。屋台をひととり眺めた後こちらも歩き疲れたので、大原駅に立ち寄って待合室のベンチでしばし休憩をとる。
ここまで結構歩いてきたので足裏がむくれて熱くなっていた。駅のベンチで靴を脱いで足裏を冷やし、やっと元気を取り戻した。再び混雑している商店街に行くとお神輿が小学校へと向かうところに出くわす。我々も先回りして裏道を通って八幡神社を経て小学校に向かう。
小学校ではすでに大勢の人がグランドの周りを取り囲んでいた。お囃子も鳴り響いている。グランドの端に張られたロープの前に行こうとするも最前列はすでに見物人で埋まっていた。中にはビニールシートや折り畳み椅子に腰掛けている人もいた。Sさんも折り畳み椅子を持ってきていたが最前列はすでに人が立っている。このまま催しが終わるまで立っていると疲れるのでせっかく持ってきたので2列目だけど折り畳み椅子を出して座ろうとしたら、最前列の人が前に出ろという。こちらは後から来たので遠慮していると「いいから前に行け!」とやや強く言われたので最前列に進んだ。確かにこの人は椅子がないので立ったままなので、我々が前に座っても見物には影響がない。校庭をみるとところどころに水溜まり、この中でお神輿を担いで練り歩くには泥んこになること必至である。


さて時刻が6時に近づいてきたので、校庭の右手入口からお神輿がひとつずつ入ってくる。汐ふみと違って担ぎ手の中には提灯をかざした人がいる。やがて入ってくるお神輿が増えてくると最初に入ったお神輿から校庭をぐるぐる回りだした。そしてほぼすべてのお神輿が校庭に入ったと思われた時は、校庭がほぼ埋まり中には泥んこの中を駆け出すお神輿もある。歓声が上がるとともに提灯で照らされたお神輿が幻想的で、それに担ぎ手の掛け声など入り交じり熱気が伝わってきて迫力がある。




汐ふみのときと違って最前列から「大別れ」を見れてラッキーであった。やがてひととおりお神輿の駆け出しが終わると1台ずつ校庭から出ていった。校庭がちょっと暗いのとお祭りの解説案内がないのがちょっと残念であった。とはいえ、泥んこのグラウンドでお神輿を担いで駆け回ってくれた担ぎ手に感謝する。
再び大原商店街を抜け、いすみ市役所の駐車場にとぼとぼと歩いて帰った。時刻はすでに7時過ぎ、腹が減っていてSさんの自宅に帰る途中でスーパーに寄ってお寿司と日本酒を買って今晩は彼の自宅で打ち上げをした。
感想
大原はだか祭り、これまでまったく知識がなかったが関東随一の祭りであり、江戸時代後期(1800年代)に始まったと伝えられている。大原十八社の神輿と氏子たちが中心となって法被やふんどし姿で神輿を担ぎ町を練り歩く。中でも波打つ海の中へ入り、力強く神輿を揺らす「汐ふみ」はこの祭りのハイライトと言っても過言ではない。ただ波と神輿がぶつかる迫力あるシーンをまじかに見れることができれば、また夕方の「大別れ」ではすべての神輿が広いグランドを駆け回るが実況中継まではいかなくとも何をやっているか少し説明のアナウンスをしてもらいたかった。
大原は漁業で栄えている町ではあるが、町自体はたいていの地方都市にあるように大原中央商店街もシャッター通りで昼間はあまり人が歩いていないであろう。ただ祭りとなるとこのように大勢の担ぎ手が集まってくる、それも中年や若手が中心で、中には女性の姿もちらほら。おそらく大原近辺の住民がほぼ参加しているのではないかと思われ、昨今の祭りにしては珍しいのではないか。今後とも末永く続いていほしいと思った。
千葉県はこのところ8月13日の千葉豪雨、また9月21日の台風25号による長雨で散々な被害に見舞われている。翌日彼の車で蘇我駅まで送ってくれたが、その途中でナビをみるとところどころ不通になっていた。帰る途中で地磁気逆転地層で有名なチバニアンを見学する計画を彼がたててくれていたが、そこに行く道路も閉鎖されていたので断念した。
それはともかく御宿に住んでいる彼のおかげで千葉県の魅力をまたまた感じた次第である。